2007年06月22日


携帯電話のインセンティブモデルを再考してみる


インセンティブ制度の廃止が現実的になりそうですが、この非常に理解しにくく不透明なインセンティブ制度というビジネスモデルって一体どのような内容なのか調べてみました。

大雑把に言うと、最新の携帯電話が0円で買うことができる理由は次の通りです。

1)携帯電話メーカ(Panasonic,NEC等)は通信キャリア(DoCoMo,au,SoftBank)が指定した仕様に基づき携帯電話を作る。
2)キャリアはメーカから携帯電話を買い上げる。
3)キャリアから販売代理店に携帯電話を卸す。(卸価格は6万円〜8万円)
4)販売代理店はエンドユーザに対し0円で販売する。
5)キャリアは販売店に対しインセンティブとして販売手数料を支払う。
6)キャリアはユーザから上記販売手数料分を上乗せした通信料金を徴収する。

ドコモの例で考えると上記販売手数料の内訳は大きく3つに分けられます。
(金額や項目については地域会社やキャリアによって大きく異なります)

【回線に関わる手数料】
新規制約手数料      8,000円
契約変更手数料      8,000円
買い増し手数料      8,000円
留守番電話獲得手数料   1,000円
いちねん割引獲得手数料  1,000円
ファミリー割引獲得手数料 1,000円

などネットワークサービスを獲得すると支払う手数料は多岐にわたっています。携帯電話の契約時にいちねん割引に加入すると1,000円引き、ファミリー割引に加入すると1,000円引き、などと言われるのはこの為です。

【機器販売に関わる手数料】
携帯電話の機種によって異なる手数料です。
おおよそ1万円から3万円程度で設定されるのが一般的。
キャリアはこの部分の手数料を調整することにより実質的な価格調整を行っています。
つまり新機種の発売当初など高い価格でも販売数が見込める場合は低く設定し、
売れ残りそうな機種や発売から半年以上経過した機種については高く設定し価格を下げ在庫を処分します。

【販売数に関わる手数料】

代理店別に設定される手数料です。
毎月の販売台数に連動して1台あたりの手数料が変化します。
最低0円から1万円程度で設定されます。

その他、期末などに期間限定の手数料が設定されたりします。

上記のインセンティブを合計すると最大で80,000円ほどになります。
代理店は携帯電話を70,000円で仕入れ、0円で販売すると70,000円の赤字になりますがキャリアから80,000円の手数料収入が見込まれるため10,000円の利益になるということです。

ただし、半年以内にユーザが解約をすると、キャリアから代理店に対しマイナスの手数料を請求します。
携帯電話を契約するときに半年間の契約を約束させられるのはこのマイナス手数料を避けるためです。

携帯電話を販売しただけでは、キャリアは手数料分だけ赤字になってしまいます。そこで、手数料分を回収するために毎月の通信料金に一定分の金額を上乗せして請求します。

ここで問題が発生します。
基本料金、通信料金の中に販売したときの手数料が上乗せされているにも関わらず、基本料金、通信料金は全てのユーザに対し一律の料金になります。
10ヶ月で機種変更するユーザと、3年間同じ機種を利用するユーザのトータルの支払額を比較すると、長い間同じ機種を利用するユーザは圧倒的に不利になってしまうのです。

同じ日に0円で新規購入し、10ヵ月後に機種変更するユーザと3年間同じ機種を使い続けるユーザの総支払額を比較します。
比較のため毎月の支払額は同じとして考えます。

【10ヶ月で機種変更するユーザが3年間で支払う金額】
・新規端末購入費用を0円
・3年間での機種変更を3回とし1回の購入費用を1万円
・毎月の支払額を6,000円
合計は0円+(10,000円×3回)+(6,000円×36回)=246,000円


【3年間同じ機種を利用したユーザが3年間で支払う金額】
・新規端末購入費用は0円
・毎月の支払額を6,000円
合計は0円+(6,000円×36回)=216,000円

10ヶ月で機種変更するユーザは携帯電話を4台購入しても総支払額は246,000円なのに対し3年間機種変更しないユーザでも支払額は216,000円となります。

本来ならば携帯電話の原価は8万円程度なのですから、頻繁に機種変更するユーザは、機器代金として24万円を支払わなければならないはずですが、
インセンティブというビジネスモデルは頻繁に機種変更するユーザの携帯電話の機器代金を3年間同じ機種を利用しているユーザが負担するというおかしなことになってしまうのです。

これは不公平だろうということで2008年から段階的にこのビジネスモデルを廃止し不公平感をなくそうというのが、今回の総務省の目的だと思われます。
一般的にユーザへの請求額の3割から4割程度が手数料の回収分とされているようですから、基本料金も通信料金も同じ程度下がるのではないでしょうか。

他にもグローバル化や、垂直モデルの見直しを含める部分もあると思いますが、その辺りはまた次の機会に検証したいと思います。

このインセンティブモデルがなくなれば携帯電話を頻繁に機種変更するユーザは、多くの金額を支払うという当たり前のことになるだけ。
安くなければ売れないというのは、その携帯電話に魅力がないだけ。

変化こそチャンス。優秀な会社や経営者はこのチャンスをどう利用するのでしょうか。なかなか面白そうな時代になりそうです。



2007年06月22日20:21 | Comment(3) | TrackBack(1)

この記事へのコメント


こんにちは。
ここまで携帯電話が普及した今となっては、インセンティブ・モデルはもうその役目を終えたということですよね。

Posted by iulius at 2007年06月23日 06:37

こんにちは。
インセンティブモデルもいい所はたくさんあるのでしょうが、その不透明性が問題視されているんでしょうね。

Posted by No Mobile,No Life. at 2007年06月23日 09:05

今回インセンティブに関してトラックバックさせていただきました。記事の方も参考にさせていただきましたのでよろしくお願いします。

Posted by にこ at 2007年06月26日 20:20
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